卑弥呼は神武より前の時代の人である。

　神武の東征は支配者の居住地（都）が日向から大和に移動した事（遷都）を意味している。遷都の時期は大和朝廷が発足した時期（神武の即位の年）で、推定するとＡＤ２８０年頃となった。一方倭人伝は作者陳壽が壮年の５０歳頃に制作されたであろうと考えるとＡＤ２８０年頃となる。従って彼は卑弥呼の死後に大和へ遷都した日本（倭国）の事情を知って倭人伝に反映できたと考えられる。ほぼ同じ時代なのでこの可能性は否定できない。

　次に地理の説明の中で女王の居所として伊都国と邪馬台国のニケ所を説明し、ニ都への距離と所要日数が記述されているのは、「倭の旧都は日向の伊都国、現在は大和の邪馬台国」と陳壽が理解していた証拠と考えられる。この結果、卑弥呼は遷都前の伊都国にいたと考えてよい事になる。
　神武の即位年の推定の結果、卑弥呼は神武より前の世代の人であると言う結果を得た事は。「卑弥呼は歴代の天皇になぜ列しないのか」という疑問を解消する事になるので、推定結果は良い方向にあることを示している。


　（出典：魏志倭人伝謎解旅　　著者　伊藤治雄　より）