著者「伊藤治雄」氏。
　本文の「おわりに」から抜粋。

　倭人伝の内容は３世紀に日本の状況を実に克明に記述しているが、卑弥呼と邪馬台国の論争のために文書全体が信用を落としてしまっているようにも思われる。これはとてももったいないことだと思う。
　残念ながらまだ謎はある。だが、それらの謎は１つの説の上で生まれたことなので、見方を変えるとその謎もとけてくるのかもしれない。だから色々な角度から解読をしてみる価値は残されている。
　どんな謎でも解けると達成感があってとても楽しい。本書が古代史読み解きの一助となれば幸いである。

　「魏誌倭人伝謎解き旅」の著者は、「伊藤治雄（いとう　はるお）」氏です。
　著者は、昭和３３年、名古屋大学工学部を卒業し、中部電力に入社後、各種原子力開発、原子力保証措置などの技術、研究開発に従事し、平成１１年退社。出向先は、日本原子力発電、（財）核物質管理センター、電気事業連合会・高速増殖炉開発準備室、（社）日本原子力産業界・中部原子力懇談会、（社）プラズマ核融合学会、シーテックなど、核開発・研究畑の最先端を歩んできた、研究者であります。

　「伊藤治雄」氏によると、「魏志倭人伝謎解き旅」の中で、次のことを、研究し、主張されておられます。つまり、「魏誌倭人伝を原文どおりに読み解くと、（方向や距離を原文どおりに読むと）女王の都としたところは、西都原となる。九州の前方後円墳は北九州から九州西岸に沿って南九州にまで分布していることがわかる。特に宮崎県の古墳は数の多さと規模において群を抜いており、古代の政治・文化の中心地が日向にあった証拠を示している。卑弥呼は他のどこでもない、現在の西都市付近に住んでいたのだ」
西都には女王の墓があるはず。そして実際そのような墓はあるのだ。
　西都市内にある西都原には九州地区で最大の西都原古墳群がある。ここに女狭穂塚（めさほづか）と呼ばれる古墳があり、女王の墓の風格を備えている。既に御陵墓参考地として宮内庁が所管しているが、いまのところ誰の古墳かはわかっていない。
　中からは、立派な家型埴輪と船型埴輪が出土した。この埴輪が西都原古墳群の出土品だとは、先年、現地へ行くまで私も知らなかった。
　以上、女狭穂塚が卑弥呼の墓という状況証拠はそろった。しかし、卑弥呼の時代と古墳の評価年代が一致するかが問題である。
　古事記、日本書紀に明記されている神武の東遷は、神武とともに都が南九州から大和に移転したことを物語っている。都が移転したのだから、以降の王の墓は日向には存在せず、大和にのみ建設されたはずである。この遷都は西暦２８０年と推定されたのだが、その結果、おおよそ３世紀末（３００年）で日向の都は終焉したと考えられる。この後には大和朝廷の勢力が巨大になっていくので、日向には大王は現れることはない。従って、この地にある「大王の古墳は３世紀末までのもの」でしか有り得ない。日向は大和朝廷の故郷であるから、遷都後も管理の目は行き届いていたことであろう。それゆえ、朝廷に対抗する王が登場して大王の墓　＝＝＝　つまり男狭穂塚・女狭穂塚を大和朝廷の墳墓地帯へ造るとは考えられないことである。結局、日向にある男狭穂塚・女狭穂塚は３世紀末までの
古墳という可能性が高いのである。

　


　倭人伝の謎解きに挑む。
　　１、原文にこだわり、読み替えしない。
　　
　諸国の配置に関する考察
　　１、邪馬台国は邪馬壱国の間違い

　倭人伝に登場する主な国々
　　１、北九州にはこんな国があった。
　　２、伊都国は南九州にあった。

　邪馬台国はどこになるのか。
　　１、卑弥呼と邪馬台国の関係
　　２、帯方郡からの距離「１万２千余里」

　卑弥呼の墓はこれだ。
　　１、古代九州の都は南九州にあった。

　男狭穂塚と女狭穂塚の検討
　　１、女狭穂塚は卑弥呼の墓だった。

　解けてきた倭人伝の謎
　　１、西都原古墳群について考える。
　　２、当て字の国について考える。
　　３、記紀の記述について考える。
　　４、魏志倭人伝について考える。
　
　大和に見る日向の痕跡